必要不可欠なポジショニング力

ポジショニングは運動量に勝る

その昔、ブラジル代表にドゥンガというボランチがいた。ブラジル代表ではキャプテンとしてワールドカップ優勝を手にした。日本のJリーグにも数年在籍し、毎年MVP級の活躍をしていた名選手なので覚えておられる方々も多いだろう。日本に来たときはすでに30歳をすぎ、運動量は相当に少なかった。ほとんどの時間帯、中央付近から動かなかった。ましてや走る姿は想像できない。
しかし、フィールドの誰よりも存在感があった。

現代サッカーではボランチにとって運動量は不可欠であると言われる。だが、ドゥンガは走らなかった。走る必要がなかったからだ。常にゲームの流れを汲み取り、一手先、二手先を読むことで数歩のポジショニングを変えるだけで走る以上の効果を出していたからだ。
全力ダッシュでプレッシャーをかけるよりも、展開を読み、ボールの出どころを予測しておけば、ボールの方から寄ってきてくれる。
ドゥンガはこの能力が卓越していたからこそ、チーム最小の運動量でも最大の功労者となり得たのだ。

もちろん、一朝一夕にできることではない。フィールド内の状況は常に頭に入れておく必要がある。味方、敵の位置、ボールを持っている選手はどんな選手で敵チームの攻撃の狙いは何か。その情報から瞬時に分析し、ボールの出どころを推理する。自分が思ったとおりに敵が動き、結果ボールを奪う。これこそボランチの守備の醍醐味と言える。

「どうやってさぼるか」考える

語弊を恐れずに言えば、「どうやってさぼるか」が重要だ。
がむしゃらに走るボランチが評価される昨今だが、運動量やスピードが他の選手と比べて劣っている選手はどうするか。それは、
「20m走るのを10mで済ますにはどうするか」をフィールド上で常に考えることと、その癖をつけることだ。結果、同じようにボールを奪うことができれば問題ないではないか。

動いていないように見えて、実はしっかりとチームに貢献している。それが、優秀なボランチと言える。