守備重視のシステム
3人のボランチを配置することをトリプルボランチと呼ぶが、見方によってはそう呼ばない場合もある。1ボランチでも前線のMFが下がってくればトリプルボランチの形となるし、2ボランチでも同様の形となるケースがある。3ボランチと呼ぶ一般的な形はDFラインの前で3人が並ぶようポジショニングされていること。具体的に言えば、DFラインの前にもう一列、DFを置くような状態のことである。
常にシステムとして採用しているチームもあるが、一般的には実力が上とみられるチームと対戦する際に、まずはディフェンスを固めたいというときに用いられることのほうが多い。
3ボランチの最大の利点は、DFラインと中盤の間の「バイタルエリア」のスペースを消しやすいこと。バイタルエリアで相手に自由してしまうと失点するリスクが高まる。3ボランチだと2人が相手選手にプレスをかけても1人余裕があるので、こぼれ球を拾いにいくことができる上、常に数的優位をつくりやすい。
3人の距離感を意識
実際に3ボランチを使っているチームとしては2012/13シーズンのチャンピオンズリーグで、スペインのバルセロナをぎりぎりまで追い詰めたACミランがある。バルセロナの巧みなパス回しやボールキープ力に対抗するためサリー・ムンタリ、マッシモ・アンブロジーニ、リカルド・モントリーボの守備的なMF3人を3ボランチとして起用した。バルセロナは前線の選手がバイタルエリアまで下がってきてボールをもらうことが多いため、ここでボールを触れないよう3ボランチとした。結果的にバルセロナに得意のポゼッションサッカーをさせず、大いに苦しめた。
3ボランチでは試合開始時は横並びのことが多いが、試合中は状況に応じてポジショニングが変化する。ボールサイドにいるボランチが前にプレッシャーをかけ、他の2人はそのカバーリングも含めた位置取りをしなければならない。ケースバイケースで3人の距離感をしっかりと保つことが大事である。