クラッシックなワンボランチ

2つの「トライアングル」の中心になるイメージ

ボランチが1人の場合は基本的には中央でプレーするイメージだ。しかしながら、現代サッカーにおいて広大な中盤のスペースを1人でカバーするというのは非常に難しい。前方にいる2名ないし、3名のMFと連携しながら守る必要がある。

ボランチの役割はチームのシステム次第で大きく変わる。攻撃的なサッカーで前線からボールを奪いに行くシステムだとボランチも積極的にプレスに参加することが求められる。
守備的なサッカーの場合はDFラインが低い位置になるので、ボランチのポジショニングも必然的に自陣よりになる。最終ライン前のフィルターになるイメージで、中央のスペースを消す。

いずれにせよ、ボランチが1人の場合、自分が2つの「トライアングル」に組み込まれているという意識でプレーすることが重要。バルセロナのような4-3-3システムの場合、ボランチは「自分+2人の攻撃的MF」と「自分+2人のセンターバック」という2つのトライアングルの中心にポジショニングすることである。

「運動量がウリ」では難しい

前線との位置関係ばかりを考えていると、最終ラインのケアが難しくなるし、最終ライン近辺にずっと残っていると、他の中盤の2人に大きなしわよせがくる。自身に守備力があっても全体のバランスを考える選手でなければ、1ボランチは難しい。

2010年南アフリカワールドカップの日本代表では、ボランチに攻撃的な攻遠藤保仁とバランサーである長谷部誠の後ろに阿部勇樹を置いた。阿部はDFラインの中央にポジショニングしDFラインとボランチの間、つまり前述の「バイタルエリア」に入ってきたボールや相手プレイヤーをはね返す役割をしていた。

このように守備専門でプレーするボランチのことを「アンカー」という。アンカーはボールにプレッシャーをかける力やカバーリングなど守備力優先で起用され、本来はセンターバックの選手を起用するチームもある。

例外としてイタリアのアンドレア・ピルロのように生粋の司令塔タイプが1ボランチで起用され場合もある。この場合、求められるのは守備力よりも攻撃面の組み立て、つまり「展開力」だ。中央にポジショニングすることで、パスを全方位に出すことが容易になる。守備面での負担をできるかぎり減らすため、他2名のMFを守備的な役割を強める必要は出てくる。

1ボランチには様々なタイプの選手がいるが、攻撃にせよ守備にせよ中央のスペースを常に意識しながらプレーする必要があるため、運動量がウリでフィールド前提を動き回るタイプのボランチは、このシステムには適していない。