2021年 1月 の投稿一覧

以外なほど奥深い「寄せ」

相手のプレーを予測する

ディフェンスをするときにポイントになる寄せ。
これにも大事なポイントがいくつも存在する。
まず、寄せるタイミング。
状況によってケースバイケースだが、ボールを所持している選手(相手)からボールが離れた(蹴られた)タイミングだ。
これより速いと、狙っているのがばれてしまう。

そして、位置関係。どこから寄せるかということ。
ボールをもらった選手にそれとなく寄っていっても効果的な寄せにはならない。
ボールをもらった選手の体の向き、利き足などでプレーを予想し、どこから寄せるかを瞬時に判断する。パスで展開すると予想したら、その方向から寄せるのが大事。
相手の優先順位1位のプレーを打ち消すことで相手はかなり戸惑う。

利き足でないほうのプレーが苦手そうな相手に有効なのは利き足側から寄せるという方法だ。
特に左利きの選手は、右足でのプレーを普段からあまりやらないことが多い。
左利きのアドバンテージをより有効に使うため、左足プレーの練習に重きをおきがちだからだ(もちろん右利きの選手もありがちだが左利きの選手が顕著)。
利き足からの寄せにより、相手は利き足以外のプレーを余儀なくされ、プレー精度が低下すればボール奪取の可能性は高まる。

相手を戸惑わせる寄せ

こちらの寄せにより相手が戸惑うような寄せが特に有効だ。
相手のアクションを待つのではなく、こちらからアクションする寄せが相手を迷わせる。寄せをする際は、相手が何をやってくるかを頭の中で決めつけず、何種類かをシミュレートしておいたほうがいい。

その中で優先順位をつけ、トラップしたボールの方向、ボールの持ち方で、寄せの速さ、方向をフレキシブルに転換していくと
良い結果に結びつく。

アプローチの重要性

個々の能力で違うアプローチ

ボランチのディフェンスで大事なのはアプローチの仕方だ。センターバックはゴールに背をむけるような状態の選手をマークすることが多いが、ボランチは基本的に前を向いている選手をマークする場面が多い。

現代サッカーの主流であるゾーンディフェンスでは、ボランチは自分の担当エリアに入ってきた相手選手に対してアプローチする。ただし、アプローチできる範囲は選手個々の能力によって決まる。

ポジショニングの良し悪しを考える

ボールにアプローチするスピードが遅ければ、相手にプレッシャーを与えることができない。相手側からすると、中途半端なスピードで突っ込んできてくれる相手は最もかわしやすい。

だが、スピードでがないならないで、やりようはある。例えば、自分から10m離れたところで相手選手がパスをもらおうとしている。10mの距離をいっぺんに縮めることは不可能でも、パスが出るタイミングを予想して、あらかじ5m近づいておけば、ボールに寄せる距離が縮まる。

良いディフェンスをするにはポジショニングが必要不可欠である。アプローチをする前から勝負は決まっている。

現代サッカーの潮流 ゾーンディフェンス

チーム全体での連動が必須

現代サッカーでは、ゾーンディフェンスが主流だ。ゾーンディフェンスとは、ポジション毎に守備の担当エリアを決めておき、そこに入ってきた相手に対し、プレッシャーをかけるという守備戦術だ。自分の担当エリアが決まっているため、動き回る必要がなく、効率的なディフェンスができる。

かつて、主流だったのがマンツーマンディフェンスはゾーンディフェンスとは真逆に文字通り「人につく」守備戦術だ。相手の選手を1人に対しマークするため、1対1のディフェンス能力が必要になる上、相手に合わせて動かなければならないため、全体的なポジショニングのバランスが崩れやすい。

ゾーンの場合、チーム全体で守備をする意識が重要になる。ボランチの守備能力は必要ではあるが、身体能力が高くない選手でも流れを読む、予測することでカバーすることができる。

ソーンはディフェンスの選択肢を増やす

マンツーマンとゾーンではボールを持った相手選手へのプレッシャーのかけ方も変わってくる。
例として、中央から攻め入ってくる相手はボール所持者と自陣側に位置しているFWの合計2人。こちら側はボランチ+センターバック2人の計3名。守備戦術はゾーン。対応方法としての選択肢として真っ先に思い浮かぶのが2パターン。
①ボールに対し、ボランチが1人でプレス
②ボランチがパス、ドリブルコースを限定するポジショニングをし、センターバックと連動しながらディフェンスをする

①はマンツーマン的な守備。ボランチの1対1ディフェンスでボールを奪えればいいが、抜かれてしまった場合は自陣内で2対2の数的同数の状況ができてしまう。
ゾーンでは②がベター。ボランチは自分でボールを奪うことよりも、センターバックに取らせるため、相手の攻撃の幅を狭める役割を担当する。ドリブルを誘導し、センターバックにカバーさせることや、パスコースをわざと空けておき、FWにパスを出させたところを狙うことも可能だ。ボランチは、自分のところでボールを奪えなくても、結果的にボールを奪うことができればよいのだ。

味方を掌握するコーチング

コーチングの達人になれ!

ボランチはフィールドの中央からやや後方に位置するので全体を見渡しことができるポジションである。FWやサイド、DFラインとのちょうど中間になるので、声によるコーチングが比較的しやすい。前線からプレスをかけている選手は、自分の後ろの状況はわからない。そこで後方にいるボランチから具体的な指示を出す。「寄せろ!」「パスコースをつぶせ!」「スペースを空けるな!」などで全体を引き締める。優れたコーチングのできるボランチがいると、前線の選手は迷うことなくプレッシャーをかけることができるので、結果、守りやすくなる。

チームの中心である自覚

ボールをどこで奪うかは、あらかじめチーム内で決めておく必要がある。
通常は相手をサイドに追い込んでいくことがベターなやり方だ。MFがサイドバックと連動して、狭いところに追いやり、奪い取る。

ただし、チーム戦術によってはあえて中央に相手を誘導するケースもある。サイドよりも中央のほうが、ボールを奪ったあとの攻撃がスムーズだからだ。ボランチにボール奪取力と展開力のある選手がいれば、この戦法を使ったほうが攻守の切り替えをスピードアップできる。

具体的にはFWが相手のDFラインにプレスをかけ、サイドにボールを回させる。その後サイドの中盤の選手が縦パスのコースを消しながら寄せていき、相手が中央にパスを出したところをボランチが前に出て行ってボールを奪う。

どれだけ守備に定評があるボランチでも、1人の個々の能力に任せてボールを奪い取るのは困難だ。他の選手をコーチングで動かすことによって、自分がボールを奪える状況を作る。

ボランチはチームの中心であるという自覚を持ち、積極的に周りを動かし、リーダーシップをとる責務がある。

必要不可欠なポジショニング力

ポジショニングは運動量に勝る

その昔、ブラジル代表にドゥンガというボランチがいた。ブラジル代表ではキャプテンとしてワールドカップ優勝を手にした。日本のJリーグにも数年在籍し、毎年MVP級の活躍をしていた名選手なので覚えておられる方々も多いだろう。日本に来たときはすでに30歳をすぎ、運動量は相当に少なかった。ほとんどの時間帯、中央付近から動かなかった。ましてや走る姿は想像できない。
しかし、フィールドの誰よりも存在感があった。

現代サッカーではボランチにとって運動量は不可欠であると言われる。だが、ドゥンガは走らなかった。走る必要がなかったからだ。常にゲームの流れを汲み取り、一手先、二手先を読むことで数歩のポジショニングを変えるだけで走る以上の効果を出していたからだ。
全力ダッシュでプレッシャーをかけるよりも、展開を読み、ボールの出どころを予測しておけば、ボールの方から寄ってきてくれる。
ドゥンガはこの能力が卓越していたからこそ、チーム最小の運動量でも最大の功労者となり得たのだ。

もちろん、一朝一夕にできることではない。フィールド内の状況は常に頭に入れておく必要がある。味方、敵の位置、ボールを持っている選手はどんな選手で敵チームの攻撃の狙いは何か。その情報から瞬時に分析し、ボールの出どころを推理する。自分が思ったとおりに敵が動き、結果ボールを奪う。これこそボランチの守備の醍醐味と言える。

「どうやってさぼるか」考える

語弊を恐れずに言えば、「どうやってさぼるか」が重要だ。
がむしゃらに走るボランチが評価される昨今だが、運動量やスピードが他の選手と比べて劣っている選手はどうするか。それは、
「20m走るのを10mで済ますにはどうするか」をフィールド上で常に考えることと、その癖をつけることだ。結果、同じようにボールを奪うことができれば問題ないではないか。

動いていないように見えて、実はしっかりとチームに貢献している。それが、優秀なボランチと言える。

ディフェンス重視のトリプルボランチ

守備重視のシステム

3人のボランチを配置することをトリプルボランチと呼ぶが、見方によってはそう呼ばない場合もある。1ボランチでも前線のMFが下がってくればトリプルボランチの形となるし、2ボランチでも同様の形となるケースがある。3ボランチと呼ぶ一般的な形はDFラインの前で3人が並ぶようポジショニングされていること。具体的に言えば、DFラインの前にもう一列、DFを置くような状態のことである。

常にシステムとして採用しているチームもあるが、一般的には実力が上とみられるチームと対戦する際に、まずはディフェンスを固めたいというときに用いられることのほうが多い。
3ボランチの最大の利点は、DFラインと中盤の間の「バイタルエリア」のスペースを消しやすいこと。バイタルエリアで相手に自由してしまうと失点するリスクが高まる。3ボランチだと2人が相手選手にプレスをかけても1人余裕があるので、こぼれ球を拾いにいくことができる上、常に数的優位をつくりやすい。

3人の距離感を意識

実際に3ボランチを使っているチームとしては2012/13シーズンのチャンピオンズリーグで、スペインのバルセロナをぎりぎりまで追い詰めたACミランがある。バルセロナの巧みなパス回しやボールキープ力に対抗するためサリー・ムンタリ、マッシモ・アンブロジーニ、リカルド・モントリーボの守備的なMF3人を3ボランチとして起用した。バルセロナは前線の選手がバイタルエリアまで下がってきてボールをもらうことが多いため、ここでボールを触れないよう3ボランチとした。結果的にバルセロナに得意のポゼッションサッカーをさせず、大いに苦しめた。

3ボランチでは試合開始時は横並びのことが多いが、試合中は状況に応じてポジショニングが変化する。ボールサイドにいるボランチが前にプレッシャーをかけ、他の2人はそのカバーリングも含めた位置取りをしなければならない。ケースバイケースで3人の距離感をしっかりと保つことが大事である。

クラッシックなワンボランチ

2つの「トライアングル」の中心になるイメージ

ボランチが1人の場合は基本的には中央でプレーするイメージだ。しかしながら、現代サッカーにおいて広大な中盤のスペースを1人でカバーするというのは非常に難しい。前方にいる2名ないし、3名のMFと連携しながら守る必要がある。

ボランチの役割はチームのシステム次第で大きく変わる。攻撃的なサッカーで前線からボールを奪いに行くシステムだとボランチも積極的にプレスに参加することが求められる。
守備的なサッカーの場合はDFラインが低い位置になるので、ボランチのポジショニングも必然的に自陣よりになる。最終ライン前のフィルターになるイメージで、中央のスペースを消す。

いずれにせよ、ボランチが1人の場合、自分が2つの「トライアングル」に組み込まれているという意識でプレーすることが重要。バルセロナのような4-3-3システムの場合、ボランチは「自分+2人の攻撃的MF」と「自分+2人のセンターバック」という2つのトライアングルの中心にポジショニングすることである。

「運動量がウリ」では難しい

前線との位置関係ばかりを考えていると、最終ラインのケアが難しくなるし、最終ライン近辺にずっと残っていると、他の中盤の2人に大きなしわよせがくる。自身に守備力があっても全体のバランスを考える選手でなければ、1ボランチは難しい。

2010年南アフリカワールドカップの日本代表では、ボランチに攻撃的な攻遠藤保仁とバランサーである長谷部誠の後ろに阿部勇樹を置いた。阿部はDFラインの中央にポジショニングしDFラインとボランチの間、つまり前述の「バイタルエリア」に入ってきたボールや相手プレイヤーをはね返す役割をしていた。

このように守備専門でプレーするボランチのことを「アンカー」という。アンカーはボールにプレッシャーをかける力やカバーリングなど守備力優先で起用され、本来はセンターバックの選手を起用するチームもある。

例外としてイタリアのアンドレア・ピルロのように生粋の司令塔タイプが1ボランチで起用され場合もある。この場合、求められるのは守備力よりも攻撃面の組み立て、つまり「展開力」だ。中央にポジショニングすることで、パスを全方位に出すことが容易になる。守備面での負担をできるかぎり減らすため、他2名のMFを守備的な役割を強める必要は出てくる。

1ボランチには様々なタイプの選手がいるが、攻撃にせよ守備にせよ中央のスペースを常に意識しながらプレーする必要があるため、運動量がウリでフィールド前提を動き回るタイプのボランチは、このシステムには適していない。

現代の主流-ダブルボランチ

重要なのは2名のバランス

ボランチの役割はチームの戦術、そしてボランチの人数によっても変わる。現代サッカーはDFラインから前のスペース、いわゆる「バイタルエリア」を埋めるために、ボランチ2人配置するダブルボランチシステムを採用しているチームが多い。

ダブルボランチのポジショニングは2人が横に並ぶ形で、1人がボールにアタックし、もう1人が全体のバランスをとるのが基本となる。例えば、右サイドから攻め込まれていたら、右ボランチは右寄りにポジショニングし、中央に入ってきたところでプレッシャーをかけていく。その際、左ボランチは右ボランチのカバーもでき、DFラインとも連携可能な中央のポジションをとるといった考え方だ。

最も重要なのはボランチ2人のバランス感覚だ。2人が同時にボールを奪いに行くと、バイタルエリアを空けてしまうリスクを伴う。かといって、2人で中央のスペースを埋めようとすると、相手の中盤にプレッシャーをかけることができず、ボールを自由に動かされてしまう。

ボランチの組み合わせはチームの狙いを表す

ダブルボランチの組み合わせは重要だ。チームの狙いそのものがの如実に現れるからだ。試合を観戦する上でも重要なポイントである。片方が守備的でもう片方が攻撃的というのは最もポピュラーな組み合わせの1つだ。攻撃的なボランチは守備が苦手という場合があるので、守備的なボランチがカバーしながらDFラインの前方のケアを担当する。

ボールにアタックするのが得意な選手とカバーリングに長けた選手という組み合わせも多い。もちろん、状況に応じて役割が変わる場合もあるが、基本的な分担は決まっている。

ボールポゼッションを主にするチームの場合はボランチ2名ともにボールコントロールの技術を擁していることが多く、ボランチ2名が攻撃の起点として機能すればボールを回しやすくなる。守備面のリスクも大きいが、自チームが相手より強いことが明白でボールを支配できる場合は、このような組み合わせのほうが相手を圧倒できる可能性は高い。

「バイタルエリア」を自由にするな

得点は「ペナルティエリアの幅」から生まれる

ボランチのディフェンスのポジショニングとして大事なこと。
「ペナルティエリアの幅にいなければいけない」というのがある。

それはボランチが「バイタルエリア」にポジショニングするのが重要だからだ。
バイタルエリアとは、ペナルティエリアの幅の中のDFラインとボランチの間にできるスペースのこと。ここはサッカーで最も得点につながりやすいエリアと言われている。

バイタルエリアが得点につながりやすいのは、攻撃の選択肢が無数に存在するからだ。選手が前を向きやすくなり、自分でドリブルで切り込んでいく、ミドルシュートを放つ、DFの背後へのスルーパスやワンツーを狙ってもいい。守備をする側は選択肢が多い分、読みづらい。

ゴールのある真ん中を固めよ

バイタルエリアを相手に使われないようにするには、バイタルエリアをなくしてしまうのが、最も効率がいい。ヨーロッパリーグの守備重視のリーグ、チームはDFライン+ボランチをゴール前、ペナルティエリアの幅の中に集めて壁を作ってしまう。

当たり前の話だが、サッカーのゴールがあるのはフィールドの真ん中。サイドを崩されようが、パスを縦横無尽に回せれようが、最後に点を取るためにはボールがゴールのある真ん中にくる。
だからこと、真ん中を固める必要があるのである。世界最高峰のサッカークラブ「バルセロナ」のような超攻撃的パスサッカーを標榜するチームでも中央を固められると非常に攻めづらい様をよくみる。

もし、ボランチがバイタルエリアにぽっかり穴を空けてしまうと、即失点につながるケースも珍しくない。ただ、サイドで味方の選手がドリブルなどで抜かれたとき、カバーにいくケースもあるだろう。その時は他の選手にカバーしてもらうといった対応などケースバイケースの対応も必要になるため、チーム内でルールを決めておかなけらばならない。

自分のいる位置を把握せよ

フィールド全体を認識

ボランチは自分がフィールドのどこにいるのかを正確に把握しなければならない。
「自分の位置?そんなの見失うわけないじゃないか」
と思うかもしれない。
だが、意外と把握していない選手が多い。

実際、ボールを追いかけたり、相手と競り合ったりしていると、いつの間にか自分の意図していない場所にポジショニングしていることが往々にしてあるのだ。

優れたボランチは常に自分のポジショニングを把握している。
それはフィールド全体における自分がいるべき場所を理解しているからだ。
「フィールドを空から見ている」と例えられる時がある。

優れたボランチはボールを持っていないときにもぼんやりしていることはない。
つまり常に周囲をよく確認している。
首を横振ったり、ディフェンスラインや他のミッドフィールダーともアイコンタクトで会話したり。

そうやって今、自分がどこにいるべきなのか。どこにいれば味方にとって助けになるか、敵にとって面倒か。頭をフル回転させているのだ。

常に正しいポジションを

どのポジションでもそうだが、ベストなポジショニングというのは試合中、常に変わっている。
だから、試合中ずっと「周りを確認する」ことを怠ってはならない。

当たり前だが、首を振って、敵味方問わず選手の位置を確認し、頭で考える。
それを試合終了のホイッスルが鳴るまで継続するのは楽じゃない。
本当にしんどい。

だが、チームの中心であるボランチは前(フォワードや攻撃的ミッドフィールダー)や後(ディフェンスライン)との中間にポジションしている。
味方への指示を出しやすい位置にいるということだ。

チーム全体が攻撃にしろ、守備にしろ、ストレスなく対応できるよう、的確な指示を送るためにもボランチが率先して「周りを確認する」のは必須だ。

ボランチは攻撃、守備の両面における本当の意味で「中心」だ。
誰もできないなら自分がやるしかない。